TAX ライブラリー(2016.04)

災害に関する税

−主な税務上の取り扱い−

□ 九州の熊本地方を震源として大きな地震が発生しました。
犠牲になられた方々に哀悼の意を表しますとともに、避難生活を余儀なくされている方々にお見舞い申し上げます。
 祈りを胸に、私たちができることに最善を尽くします。

□ 今月は、災害に関して、法人や事業を営む個人が支出する費用の税務上の取り扱いについて説明します。ご参考までに、ご一読下さい。

<法人税、及び、所得税>
項 目 内 容 関係法令・通達
○災害により滅失・損壊した資産等 ・法人の有する商品、店舗、事務所等の資産、及び、事業を営む個人の有する事業用資産が、災害により被害を受けた場合に、その被災に伴い、次のような損失、又は、費用が生じたときには、その損失、又は、費用の額は損金の額に算入される。
(1)商品や原材料等の棚卸資産、店舗や事務所等の固定資産などの資産が、災害により滅失又は損壊した場合の損失の額
(2)損壊した資産の取壊し又は除去のための費用の額
(3)土砂その他の障害物の除去のための費用の額
法人税法第22条第3項、所得税法第37条第1項、第51条第1項
○復旧のために支出する費用 ・法人、及び、事業を営む個人が、災害により被害を受けた固定資産(被災資産)について支出する費用に係る資本的支出と修繕費の区分
(1)被災資産について、その原状を回復するための費用は修繕費。
(2)被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水、又は、土砂崩れの防止等のために支出する費用について、修繕費とする経理をしているときは、この処理が認められる。
(3)被災資産について支出する費用のうち、資本的支出か修繕費か明らかでないものがある場合、その金額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、この処理が認められる。
法基通7−8−6、所基通37−11、37−12の2、37−14の2
○従業員等に支給する災害見舞金品 ・法人、及び、事業を営む個人が、災害により被害を受けた従業員等、又は、その親族等に対して一定の基準に従って支給する災害見舞金品は、福利厚生費として損金の額に算入される。
・また、法人が、自己の従業員等と同等の事情にある専属下請先の従業員等又はその親族等に対して一定の基準に従って支給する災害見舞金品についても同様。
措通(法)61の4(1)−10(2) 、61の4(1)−18(4)
○災害見舞金に充てるために同業団体等へ拠出する分担金等 ・法人、及び、事業を営む個人が、所属する同業団体等の構成員の有する事業用資産について、災害により損失が生じた場合に、その損失の補てんを目的とする構成員相互の扶助等に係る規約等に基づき合理的な基準に従って、同業団体等から賦課され、拠出する分担金等は、その支出する事業年度の損金の額に算入される。 法基通9−7−15の4、所基通37−9の6
<法人税関係>
項 目 内 容 関係法令・通達
○取引先に対する災害見舞金等 ・法人が、被災前の取引関係の維持・回復を目的として、取引先の復旧過程においてその取引先に対して行った災害見舞金の支出、事業用資産の供与等のために要した費用は、交際費等に該当しないものとして損金の額に算入される。 措通(法)61の4(1) −10の3
○取引先に対する売掛金等の免除等 ・法人が、災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として売掛金、貸付金等の債権を免除する場合には、その免除することによる損失は寄附金又は交際費等以外の費用として損金の額に算入される。
・また、既契約のリース料、貸付利息、割賦代金の減免を行う場合、及び、災害発生後の取引につき従前の取引条件を変更する場合も同様。
法基通9−4−6の2、措通(法)61の4(1) −10の2
○取引先に対する低利又は無利息による融資 ・法人が、災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として低利、又は、無利息による融資を行った場合における通常収受すべき利息と実際に収受している利息との差額は、寄附金に該当しないものとされる。 法基通9−4−6の3
○自社製品等の被災者に対する提供 ・法人が、不特定又は多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用は、寄附金、又は、交際費等に該当しないものとして損金の額に算入される。 法基通9−4−6の4、措通(法)61の4(1) −10の4
○災害による損失金の繰越し ・法人の各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額のうち、棚卸資産、固定資産等について災害により生じた損失に係るもの(災害損失欠損金額)がある場合には、その事業年度が青色申告書を提出しなかった事業年度であっても、その災害損失欠損金額に相当する金額は、その各事業年度において損金の額に算入される。 法人税法第58条第1項
<所得税関係>
項 目 内 容 関係法令・通達
○個人が支払を受ける災害見舞金 ・個人が支払を受ける災害見舞金で、その金額がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものについては、課税しない。 所基通9−23
○低利又は無利息により生活資金の貸付けを受けた場合の経済的利益 ・災害により臨時的に多額な生活資金を要することとなった役員、又は、使用人が、使用者からその資金に充てるために低利、又は、無利息で貸付けを受けた場合に、その返済に要する期間として合理的と認められる期間内に受ける利息相当額の経済的利益は課税しない。 所基通36−28(1)
○被災事業用資産の損失の繰越し ・事業を営む個人の、その年の前年以前3年内の各年において生じた純損失の金額のうち、棚卸資産、固定資産等について災害により生じた損失に係るもの(被災事業用資産の損失の金額)がある場合には、その損失の生じた年分が青色申告書を提出しなかった年分であっても、その被災事業用資産の損失の金額に相当する金額は、その年分の総所得金額等の計算上控除する。 所得税法第70条第2項
<相続税関係>
項 目 内 容 関係法令・通達
○農地等に係る納税猶予の特例の継続適用 ・相続税、又は、贈与税における「農地等に係る納税猶予の特例」の適用を受けている農地等が、農業に使用されなくなった場合でも、例えば建築資材の置き場に使用されるなど、災害のためにやむを得ず一時的に農業に使用されなくなった場合には、その土地は農業に使用しているものとして特例の適用が継続される。 措通(相)70の4−12、70の6−13の3