LEGAL ライブラリー − 注目の「ITニュース」(2025.11)

生成AIの影響

−6.生成AIと著作権−(2)生成AIと著作権の関係-2.各論

□ 生成AIの登場は、ビジネスや社会に大きな影響を与えます。また、情報格差が増々拡大し、知らないうちに、AIに使われる人と、それを使いこなし革命的な進化を遂げる人に二分化されます。スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した「IMD世界デジタル競争力ランキング2024」で、日本は67カ国中31位となっており、ITリテラシーの欠如によるDX化の遅れが国家的課題となっています。
 そこで、回を分けて、特に生成AIを中心に、ITがもたらす、「経済効果」、「労働市場」、「社会的課題」、「知的財産権侵害」、「データプライバシーの懸念」、「セキュリティの脆弱性」等について、解説します。
 今回は、「生成AIと著作権ー(2)生成AIと著作権の関係-2.各論(まとめ)」について解説します。

□ AIと著作権が関係する場面は、生成AIの開発と利用するフローを考慮して、段階的に検討する必要があります。例えば、「AIの開発・学習段階」と「AIの生成・利用段階」では著作物の利用行為が異なり、関係する著作権法の条文も異なってきますので、両者を分けて考えることになります。また、AIが生成した「AI生成物」が「著作物」に当たるかという点も、別途、考慮しなければなりません。

□ AIの開発・学習段階(法第30条の4)
 情報解析の用に供する目的で著作物を利用する場合など、「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」については、平成30年の著作権法改正により、柔軟な権利制限規定が設けられることとなりました(法第30条の4)。
【著作権法第30条の4(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)】
著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
 一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
 二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第47条の5第1項第2号において同じ。)の用に供する場合
 三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合

□ AIの生成・利用段階
 私的に鑑賞するため画像等を生成するといった行為は、権利制限規定(私的使用のための複製)に該当し、著作権者の許諾なく行うことが可能です(法第30条第1項)。つまり、生成が権利制限規定に該当する場合は、AI生成物に既存の著作物との「類似性」及び「依拠性」が認められたとしても、生成行為は著作権侵害とはなりません。
 なお、生成(複製)に関する権利制限規定としては、授業目的の複製(法第35条)等があります。

□ 著作物とは  著作物は、「@思想又は感情を、A創作的に、B表現したものであつて、C文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とされています(法第2条第1項第1号)。 すなわち、AIが自律的に生成したものは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」ではなく、著作物に該当しないと考えられます。
 これに対して、人が思想感情を創作的に表現するための「道具」としてAIを使用したものと認められれば、著作物に該当し、AI利用者が著作者となると考えられます(著作権審議会 第9小委員会報告書)。
 ここで、人がAIを「道具」として使用したといえるか否かは、人の「創作意図(下記注1)」があるか、及び、人が「創作的寄与」と認められる行為を行ったか、によって判断されます。

注1)「創作意図」とは、思想又は感情を、ある結果物として表現しようとする意図のこと。


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