LEGAL ライブラリー − 注目の「ITニュース」(2025.09)
生成AIの影響
−6.生成AIと著作権−(1)著作権制度
□ 生成AIの登場は、ビジネスや社会に大きな影響を与えます。また、情報格差が増々拡大し、知らないうちに、AIに使われる人と、それを使いこなし革命的な進化を遂げる人に二分化されます。スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した「IMD世界デジタル競争力ランキング2024」で、日本は67カ国中31位となっており、ITリテラシーの欠如によるDX化の遅れが国家的課題となっています。
そこで、回を分けて、特に生成AIを中心に、ITがもたらす、「経済効果」、「労働市場」、「社会的課題」、「知的財産権侵害」、「データプライバシーの懸念」、「セキュリティの脆弱性」等について、解説します。
今回は、「生成AIと著作権ー(1)著作権制度」について解説します。
□ 著作権法の目的 著作権法は、「著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的」としています(著作権法第1条)。
すなわち、著作権法では「著作者等の権利・利益を保護すること」と、「著作物を円滑に利用できること」のバランスをとることが重要とされており、各種規定の制度設計がなされています。
□ 著作権法が保護する対象(著作物) 著作権法は、「著作物」を保護するものです。著作物でないもの、例えば、単なるデータ(事実)やありふれた表現、表現でないアイディア(作風・画風など)は、著作権法による保護の対象にはなりません。
□ 著作者・著作権者 「著作者」とは、著作物を創作する者をいいます(法第2条第1項第2号)。著作物を創作した時点で、著作者は何ら手続を取らなくても、自動的に「著作権」(及び「著作者人格権」)を取得し、「著作権者」となります(法第17条第1項、第2項)。
□ 著作者の権利 著作権は、複製、上演、演奏、上映といったように、著作物の利用の形態ごとに権利、すなわち、「支分権」が定められています。著作権と著作者人格権に分けられます。
□ 著作権侵害要件 著作権(支分権)の対象となる利用行為をしようとする際は、著作権者から許諾を得ることが原則です(法第63条第1項)。他人の著作物を、@権利者から許諾を得ておらず、A権利制限規定にも該当しないにもかかわらず利用した場合は、著作権侵害となります。
判例では、著作権侵害の要件として、次の2つの要件を示しています。
@「後発の作品が既存の著作物と同一、又は類似していること」(類似性)
A「既存の著作物に依拠して複製等がされたこと」(依拠性)
□ 著作権侵害に対する制裁 著作権侵害に対しては、著作権者は、侵害行為の停止・予防措置の請求※や、侵害により被った損害の賠償請求等が可能です。例えば、投稿者に対して削除を直接要請すること、配信停止を求める訴訟を裁判所に提起すること等の手段が可能です。
また、著作権侵害行為は、刑事罰の対象となります。すなわち、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科(法人は3億円以下の罰金)と規定されています。ただし、著作権侵害罪は、原則として権利者による告訴が必要な「親告罪」とされています。
□ 権利制限 他人の著作物を利用したい場合、権利者から利用の許諾を得るのが原則です。著作権を譲り受けることでも可能です。一方で、著作権法には、公益性の高い利用等、一定の場合に著作物の利用を認める規定が各種設けられています(権利制限規定)。権利制限規定に該当する場合は、権利者から許諾を得ることなく、著作物を利用することが可能です。例えば、次のようなケースです。
@私的使用のための複製(法第30条)
A引用(法第32条)
B学校その他の教育機関における複製等(法第35条)
C非営利・無料・無報酬での上演等(法第38条)
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