LEGAL ライブラリー − 注目の「ITニュース」(2025.07)

生成AIの影響

−5.生成AIがもたらす社会的課題

□ 生成AIの登場は、ビジネスや社会に大きな影響を与えます。また、情報格差が増々拡大し、知らないうちに、AIに使われる人と、それを使いこなし革命的な進化を遂げる人に二分化されます。スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した「IMD世界デジタル競争力ランキング2024」で、日本は67カ国中31位となっており、ITリテラシーの欠如によるDX化の遅れが国家的課題となっています。
 そこで、回を分けて、特に生成AIを中心に、ITがもたらす、「経済効果」、「労働市場」、「社会的課題」、「知的財産権侵害」、「データプライバシーの懸念」、「セキュリティの脆弱性」等について、解説します。
 今回は、「生成AIがもたらす社会的課題」について解説します。

□ 情報通信白書では、AIの進化に伴う課題と生成AIのリスク、国産LLMの開発、情報流通の健全性確保について論じています。
 参考文献:「情報通信白書 第1節 AIの進化に伴う課題と現状の取組(令和6年版)」/総務省(PDF形式:1.67MB)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd141100.html
 以下に要約します。

□ 要約
●AIの進化により便利さが増す一方で、バイアスやブラックボックス化のリスクが存在します。また、生成AI特有のリスクとして、ハルシネーションや偽情報の生成が挙げられます。総務省・経済産業省のガイドラインでは、リスクを認識しつつAIの利用を促進する方針が示されています。
(1)生成AIが抱える課題
・生成AIは、バイアスや差別的結果を出力するリスクがある。
・ディープフェイクによる偽情報の流通が社会問題化している。
・生成AIの利用において、個人情報の流出や著作権侵害の懸念がある。
(2)主要なLLMの概要
・米国のビッグテック企業が先行しており、日本では中規模モデルのLLMが開発されている。
・日本の企業も独自にLLM開発に取り組んでおり、透明性の高い国産LLMの必要性が強調されている。
(3)国産LLMの開発
・NICTは、350GBの高品質な日本語Webテキストを用いて400億パラメータのLLMを開発した。
・サイバーエージェントは、最大70億パラメータの日本語LLM「CyberAgentLM2-7B」を発表した。
・NTTは、軽量で高性能な日本語LLM「tsuzumi」を開発し、商用サービスを開始した。
●生成AIが及ぼす課題
・生成AIの普及に伴い、偽情報の流通や社会的・経済的課題が増加している。
・ディープフェイク技術による情報操作や犯罪利用が懸念されている。
(1)ア ディープフェイクによる課題
・高品質な偽情報が生成され、社会的影響を及ぼす事例が増加している。
・2024年には多くの国で選挙が予定されており、偽情報のリスクが高まっている。
(2)ディープフェイクによる情報操作や犯罪利用への対策
・EUは「デジタルサービス法」を施行し、偽情報対策を強化している。
・米国では、AI企業がディープフェイク対策の技術開発に取り組んでいる。
●著作権を含む知的財産権等に関する議論
・生成AIの生成物に関する著作権侵害の訴訟が増加している。
・日本でも著作権に関する議論が進んでおり、法改正の必要性が指摘されている。
・AI事業者と権利者の契約による権利侵害対策が求められている。
・Microsoftは、生成物に関する法的リスクを負う「Copilot Copyright Commitment」を発表した。


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