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連載“改正民法”

−第23回「約款」

□ 2020(令和2)年4月1日より、改正民法が施行されました(「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)」、平成29年5月26日成立、同年6月2日公布)。
 現在の民法(債権関係)は1896(明治29)年に制定されました。債権法は取引社会を支える法的な基礎であるにも関わらず、約120年もの間、ほとんど改正がなされていません。
 今回の改正は、社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かり易いものとするために、実務で通用している基本的なルールを明文化したものです。
今回は「約款」について、解説します。

□ 重要ポイント
1.定型約款の意義(改正民法第593条)
2.定型約款の有効要件(改正民法第548条の2第1項)
3.定型約款の変更(改正民法第548条の4第1項)

□ 解 説
・ 約款とは、多数取引のためにあらかじめ作られた定型の契約条項のことです。旧民法では、約款についての定めはありません。しかし、取引実務において約款が使用されている実態に合わせて、改正民法では「定型約款」という概念を定義し、これに当てはまる約款を対象とした規定が新設されました。

1.定型約款の意義  定型約款とは定型取引に用いられる約款を指します。ここで、「定型取引」とは以下の要件を充足たすものです。例えば、市販のコンピュータソフトウェアのライセンス契約、インターネットバンキング契約などです。
(1)不特定多数の者を相手方として行う取引
(2)取引の内容の全部または一部が画一的であることが双方にとって合理的なもの
 したがって、相手方の個性に着目した取引である労働契約は上記(1)の要件を満たさず、また、単に契約当事者間の交渉力の格差によるもので、当事者の一方にとっては取引内容が画一的であることに合理的理由がない場合は、(2)の要件を満たさず、定型取引には該当しません。

2.定型約款の有効要件  以下のいずれかの場合に定型約款が有効となります(改正民法第548条の2第1項)。
(1)定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき  すなわち、定型約款を契約の内容とする合意があれば有効となります。定型約款の各条項を表示する必要はありません。
(2)定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき  すなわち、契約締結に先んじて「表示」する必要があります。ここで「表示」とは、他の約款と識別可能な程度に表示すれば足りるとされています。例えば、書面や電子メールなどの電磁的記録で提供するほか、定型約款がアップされている定型約款準備者のWEBサイトの閲覧を促すなどの方法です。
 この表示義務を怠った場合、定型取引の合意前であれば、定型約款の内容について合意したものとみなすことができません(改正民法第548条の3第2項)。また、定型取引の合意後に表示義務を怠った場合には、定型約款準備者の債務不履行となり、損害賠償請求を受ける場合があります。

3.定型約款の変更  定型約款の変更は、以下のいずれかに当たる場合には、取引の相手方と個別に合意することなく、契約の内容を変更することができます(改正民法第548条の4第1項)。
(1) 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき
(2) 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無、及び、その内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき


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