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連載“改正民法”

−第21回「寄託契約」

□ 2020(令和2)年4月1日より、改正民法が施行されました(「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)」、平成29年5月26日成立、同年6月2日公布)。
 現在の民法(債権関係)は1896(明治29)年に制定されました。債権法は取引社会を支える法的な基礎であるにも関わらず、約120年もの間、ほとんど改正がなされていません。
 今回の改正は、社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かり易いものとするために、実務で通用している基本的なルールを明文化したものです。
今回は「寄託契約」について、解説します。

□ 重要ポイント
1.寄託契約の諾成化(改正民法第657条)
2.寄託物を受け取るまでの間の寄託者の解除権(改正民法第657条の2)
3.再寄託(改正民法第658条2項)
4.混合寄託(改正民法第665条の2第1項)
5.消費寄託(改正民法第666条)

□ 解 説
 寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生じます(改正民法第657条)。対象物の貸し借りをおこなうという点で賃貸借契約と同じで、また、労務の提供がなされるという点で委任契約と同じですが、物の保管のためにおこなわれるという点で両者と異なります。

1.寄託契約の諾成化(改正民法第657条)  寄託契約は、旧民法では要物契約、すなわち、寄託物の引渡しがなければ契約が成立しないとされていましたが、この度の改正によって諾成契約に変更されました。

2.寄託物を受け取るまでの間の寄託者の解除権(改正民法第657条の2)  寄託契約が諾成契約とされたことにともなって、寄託物を交付する前であれば、寄託者は、有償であると無償であるとを問わず寄託契約を解除することができます(改正民法第657条の2第1項前段)。もっとも、解除によって受寄者が損害を被った場合には、寄託者が損害を賠償する必要があります(改正民法第657条の2第1項後段)。また、受寄者についても、有償寄託と書面による無償寄託の場合において、寄託者が定められた時期に寄託物を引き渡さず、受寄者が相当の期間を定めて引き渡しの催告を行ったにもかかわらず寄託者が寄託物を引き渡さないときには契約を解除することができるとしました(改正民法第657条の2第3項)。

3.再寄託(改正民法第658条2項)  人的な信頼関係を基礎とする委任契約では、「やむを得ない事由があるとき」に復代理が認められていることから、改正民法では再寄託がみとめられました。再寄託した場合の再受寄者は、寄託者に対して、受寄者と同一の権利及び義務を負います(改正民法第658条3項)。

4.混合寄託(改正民法第665条の2第1項)  受寄者が寄託を受けた代替性のある寄託物を、他の寄託者から寄託を受けた種類及び品質が同一の寄託物と混合して保管し、寄託されたものと同数量のものを返還する寄託のことを混合寄託といいます。混合して保管されている寄託物の一部が滅失した場合、寄託者は、総寄託物に対する自己の寄託した物の割合に応じた数量の物の返還を求めることができるにとどまるとし、寄託した物との数量の差は損害賠償によって補填します(改正民法第665条の2第3項)。

5.消費寄託(改正民法第666条)  受寄者が契約により、寄託物を消費することができる寄託を消費寄託といいます。消費寄託については目的物の処分移転に関するものを除き、寄託に関する規定が適用されることになりました(改正民法第666条2項)。したがって、預金・貯金に関する金銭の寄託以外の消費寄託については、受寄者は、返還時期の定めがある場合には、やむを得ない事由がない限り、寄託物を期限前に返還することはできません(改正民法第663条2項)。なお、預金・貯金に関する金銭の寄託については、受寄者にも預かった金員を運用できるという利益がありまり、消費貸借に性質が近いため、消費貸借の規定が準用されます(改正民法第666条3項、改正民法第591条2項ないし3項)。


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