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連載“改正民法”

−第17回「契約に関する基本原則」

□ 2020(令和2)年4月1日より、改正民法が施行されました(「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)」、平成29年5月26日成立、同年6月2日公布)。
 現在の民法(債権関係)は1896(明治29)年に制定されました。債権法は取引社会を支える法的な基礎であるにも関わらず、約120年もの間、ほとんど改正がなされていません。
 今回の改正は、社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かり易いものとするために、実務で通用している基本的なルールを明文化したものです。
 今回は「契約に関する基本原則」について、解説します。

□ 重要ポイント
1.契約自由の原則の明文化
2.履行の不能が契約成立時に生じていた場合でも、その履行不能によって生じた損害の賠償を請求することができる。
3.契約の成立−旧民法第526条「発信主義」の規定の削除

□ 解 説
1.近代私法の基本原則と言われる契約自由の原則は次の4つのことを言います。
 @契約締結の自由  契約を締結し、又は、締結しない自由のこと
 A相手方選択の自由  契約の相手方を選択する自由のこと
 B内容決定の自由  契約の内容を自由に決定することができること
 C方式の自由  契約を書面又は口頭で締結するかといった、契約締結の方式を自由に決定することができること
 これらの基本原則は確立した法理として認められていますが、旧民法には明文の規定がありませんでした。そこで、「法令に特別の定めがある場合を除き」、及び、「法令の制限内において」といった文言を加えた上で、契約に関する基本原則を明文化しました(改正民法第521条、522条第2項)。

2.契約に基づく債務の履行が、その契約成立のときにすでに不能であった場合でも、契約の効力発生が妨げられないことを前提として、債務不履行(履行不能)による損害賠償請求(履行利益の賠償)を認めるものです。
 従来、日本では、契約成立時にすでに債務の実現が不能な場合(原始的不能)は債務は無効であると考えてられてきました。そうすると、そもそも契約自体が成立せず、債務不履行責任を免れることになります。しかし、契約締結後に履行不能になった場合(後発的不能)とのバランスを考えると、原始的不能の場合にも、不法行為責任(契約締結上の過失責任)と構成するよりも、契約責任と構成した方が妥当であると、近時の国際的な契約準則では考えられていました。

3.契約の承諾に関する発信主義の規定を削除し、改正民法第97条第1項に従い、契約の成立時期を到達主義にあらためました。また、申込みの撤回の通知の延着に関する旧民法第527条の規定が削除されました。その結果、申込みの撤回通知と承諾の通知の先後で決することになりました。


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