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連載“改正民法”

−第16回「弁済」

□ 2020(令和2)年4月1日より、改正民法が施行されました(「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)」、平成29年5月26日成立、同年6月2日公布)。
 現在の民法(債権関係)は1896(明治29)年に制定されました。債権法は取引社会を支える法的な基礎であるにも関わらず、約120年もの間、ほとんど改正がなされていません。
 今回の改正は、社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かり易いものとするために、実務で通用している基本的なルールを明文化したものです。
 今回は「弁済」について、解説します。

□ 重要ポイント
1.「弁済」とは何か?−基本概念の明確化
2.第三者弁済に関する規定の見直し
3.「債権の準占有者」から「受領権者としての外観を有する者」への変更
4.弁済をするとき

□ 解 説
1.「弁済」とは
・弁済とは、債務の履行のことです。弁済があると債権は目的を達成して消滅します。債権の消滅原因には、他に、相殺、更改、免除、混同がありますが、弁済は最も基本的なものですが、旧民法には規定がありませんでした。そこで、改正民法では「第6節 債権の消滅」の冒頭に、「債務者が債権者に対して債務を弁済したときは、その債権は、消滅する。」とする規定を新設しました(改正民法第473条)。

2.第三者弁済に関する規定の見直し
・弁済は、原則として、債務者以外の第三者でも行うことができます(旧民法第474条第1項、改正民法第474条第1項、第4項)。この点、旧民法は、「利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。」としていました(旧民法474条第2項)。債務者の立場を考慮したものですが、これでは債権者は、後になって債務者の意思に反することが分かった時に、受領した弁済金を返還しなければなりません。
 そこで、改正民法は、債権者の立場に配慮し、旧民法下の解釈を明文化して、「利害関係を有しない第三者」という文言を「正当な利益を有する者でない第三者」に改め、次の2つの変更を行いました。
@弁済をするについて正当な利益を有する者(物上保証人等)でない第三者による弁済が債務者の意思に反したとしても、債権者がそのことを知らなかった場合には弁済は有効(改正民法第474条第2項但書)。
A債権者は第三者弁済を受領しないことができる。ただし、履行引受のように債務者の委託があり、債権者がそれを知っていた場合には受領しなければならない(改正民法第474条第3項)。

3.「債権の準占有者」から「受領権者としての外観を有する者」へ
・弁済は、債権者および弁済受領権限を付与された第三者に対してしなければその効力を生じないのが原則です。しかし、旧民法では、その例外として、「債権の準占有者」への弁済は、弁済者が善意・無過失であれば有効とされていました(旧民法第478条)。
 しかし、この「債権の準占有者」という語は一般的には分かりにくいため、改正民法では内容は変更せず、「債権の準占有者」という言葉を「受領権者以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するもの」に変更したものです(改正民法第478条)。

4.弁済をするとき
 従来、商法には、「法令又は慣習により商人の取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、債務の履行をし、又は履行の請求をすることができる」とする規定がありましたが(旧商法第520条)、旧民法には規定はありませんでした。
 そこで、改正民法は、弁済の時間について、「法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済をし、又は弁済の請求をすることができる。」としました(改正民法第484条第2項)。これに伴い、旧商法第520条の規定は削除されました。


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