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連載“改正民法”

−第13回「連帯債務」

□ 2020(令和2)年4月1日より、改正民法が施行されます(「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)」、平成29年5月26日成立、同年6月2日公布)。
 現在の民法(債権関係)は1896(明治29)年に制定されました。債権法は取引社会を支える法的な基礎であるにも関わらず、約120年もの間、ほとんど改正がなされていません。
 今回の改正は、社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かり易いものとするために、実務で通用している基本的なルールを明文化したものです。
 今回は「連帯債務」について、解説します。

□ 重要ポイント
1.履行の請求、免除等を絶対的効力事由から除外し、相対的効力の原則を徹底(改正民法第441条本文、第439条第1項、第440条)。

2.性質上不可分である場合に限り、不可分債務または不可分債権が成立する(改正民法第428条、第430条)。

3.連帯債務者の求償権に関して、連帯債務者は自己の負担割合を超える額を弁済等しなくとも、他の連帯債務者に対して各自の負担割合に応じて求償することができる(改正民法第442条第1項)。

□ 解 説
1.相対的効力の原則の徹底
 連帯債務とは、その目的が性質上可分であり各債務者がそれぞれ債権者に対して全部の履行をすべき債務を負うものです。
 旧民法では、連帯債務者の一人について生じた事由の効力は、他の連帯債務者には及ばないのが原則(相対的効力の原則)でした(旧民法440条)。 しかし、旧民法は相対的効力の原則をとりながら、連帯債務者の一人に、履行の請求、更改、相殺、免除、混同、時効の完成等の事由が生じた場合、その効力は他の連帯債務者にも及ぶ(絶対的効力)として、例外を広く認めていました。もとより、連帯債務者間に密接な関係がない事例もあり、広く絶対的効力を認めることには批判が多々ありました。
 改正民法では、債権者からの履行の請求、免除、時効の完成を絶対効力事由から除外し、相対的効力事由としました(改正民法441条本文、439条1項、440条)。ただし、債権者と他の連帯債務者の一人が「別段の意思表示を表示したとき」には、当該他の連帯債務者に対する効力はその意思に従うものとされています(改正民法第441条ただし書)。

2.不可分債務・不可分債権
(1)不可分債務とは、複数の債務者が同一の不可分な給付を目的として負う債務をいい、不可分債権とは、同一の不可分な給付を目的とする債権について、複数の債権者が存在する場合です。
 旧民法では、不可分債務、又は、不可分債権が成立する要件として、債権の目的が性質上不可分である場合と、性質上可分だが当事者の意思表示によって不可分とされる場合を認めていました。
 改正民法では、性質上不可分である場合に限り、不可分債務または不可分債権が成立することとしました(改正民法第428条、第430条)。また、改正民法は、従来の不可分債務のうち意思表示により不可分とされていたものを「連帯債務」と整理し、従来の不可分債権のうち意思表示により不可分とされていたものを、「連帯債権(新設)」としました(改正民法第432条)。
(2)連帯債権とは、その目的が性質上可分であり、各債権者がそれぞれ債務者に対して全部又は一部の履行をすべきことを請求できる債権を言います。連帯債権者の一人について生じた事由の他の連帯債権者に対する効力については、連帯債務と同じく相対的効力しか生じないのが原則です(改正民法第435条の2)。絶対的効力を有する@履行の請求・弁済、A更改、B免除、C相殺、D混同以外の事由は、(別段の意思表示がない限り)他の連帯債権者に対して効力を生じません(改正民法第433条ないし435条)。

3.連帯債務者間の求償権
 改正民法では、自己の財産をもって共同の免責を得た連帯債務者が他の連帯債務者に求償するための要件として、共同の免責を得た額が自己の負担割合を超えなくとも、他の連帯債務者に対して各自の負担割合に応じて求償することができるとしました(改正民法第442条第1項)。これは、従来の判例法理を明文化したものです。また、求償権の額については、原則として連帯債務者が支出した金額としつつも、連帯債務者が支出した額が共同の免責を得た額を超える場合には、共同の免責を得た額を基準とすることを明文化しました(改正民法第442条第1項かっこ書)。


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