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 LN00654 <ネットワーク社会と戦略法務シリーズ> キャッシュカードの不正利用犯罪への対策! −預金者保護法となりすまし(スキミング、フィッシング)被害−
序.自身の預金通帳から知らない間に預金が引き出される等、キャッシュカードを不正に利用した犯罪が多発しています。このケースでは、従来、金融機関側は、法律(民法第478条「債権の準占有者への弁済」)を盾に、預金者の被った損害は預金者が負うものとして、預金者は泣き寝入りでした。現在、カード決済が日常的なものとなっており、これでは社会生活が成り立ちません。そこで、預金者保護法が成立、施行されました(2006年2月)。しかし、実は、この法律も万全ではないのです。
 具体的な事例を基に、わが国の法制度の課題と自分自身で預金を守る方法について、2回に分けて説明します。

[事例-1]:ATM(現金自動預け入れ払い機)による偽造カード、または盗難カードを利用され、預金が引き出され、被害を被った場合。
[事例-2]:銀行通帳の盗難、またはインターネットバンキングを不正に利用され(フィッシング)、預金が引出され、被害を被った場合。

1.問題の所在−民法478条と預金者保護法
 (1) 民法478条は、「債権の準占有者に対する弁済」について規定しています。すなわち、債務者は、債権者であるかのように装っている人(債権の準占有者)が本当の債権者であると信頼して債務を弁済した場合、その弁済は債権者に対する弁済と同様、有効なものとなる、というものです。
 被害を被った債権者は気の毒ですが、一般に債務者は債権者に対して弱い立場にありますから、偽の債権者が本物と思って弁済した債務者を保護することにしたものです。
 (2) 預金者保護法の必要性 ATM(現金自動預け入れ払い機)による偽造カード、または盗難カードを利用され、預金が引き出され、被害を被った場合([事例-1] )では、銀行は預金の払い戻しに応じる義務のある者=債務者であり、預金者は銀行に対して預金を引き出す権利(預金の払戻請求権)を持っている者=債権者です。銀行は、キャッシュカードを持っている人がパスワードを入力し、ATM機から預金を引き出した場合、キャッシュカードは借用証、暗証番号の入力は偽の委任状と同じ意味があり、銀行はキャッシュカードを使用している人が本物の預金者と信じ、弁済したことになります。
 銀行(債務者)は預金者(債権者)に対して弱い立場にあるとは言えません。民法が想定している場面とは異なるものです。しかも、キャッシュカードやATM機を設置し、このシステムを導入、運用しているのは債務者である銀行であり、銀行の定めたルールの下で、預金者は預金の出し入れをしているのです。一般的な場面を想定し、規定をしている民法478条の適用場面ではありません。そこで、特別法の制定が必要になったのです。

2.預金者保護法
 (1) 預金者保護法とは 被害を受けた預金者(債権者)に“過失”がなければ、原則として、金融機関が被害を全額補償しなければならないというものです。つまり、金融機関側(債務者)は預金者(債権者)に重過失(:大きな落ち度)があったことを立証しなければ、責任を免れず、補償しなければならないとするものです。
 (2) この法律の対象となる金融機関 銀行、信用金庫、信用組合、農協、漁協、郵便局、労働金庫等、ほぼ全ての金融機関の預金、貯金です(法第2条)。

3.問題点
 (1) この法律では、預貯金者とは、「金融機関と預貯金等契約(預貯金の預入れ及び引出しに係る契約又はこれらに併せて金銭の借入れに係る事項を含む契約をいう。)を締結する個人をいう。(法第2条第2項)」と規定されており、預金者が個人に限定されています。合理的な区別をする理由が見当たりません。
 (2) 偽造カードと盗難カードの不正使用のケースとでは、補償される条件を分けて規定しています。つまり、盗難されたカードについては、本当の預金者以外の者が所持しているところに問題があるだけで、カード自体は問題がないことを根拠として、民法478条の適用があるかのような規定の仕方をしています。要注意です。次号で詳述します。
 (3) 銀行の通帳を盗難されたり、インターネットバンキングのパスワードを不正に盗み取られ(フィッシング)、預金が引き出された場合は、この法律の適用はありません([事例-2])。※但し、現在は全銀協の自主ルールにより一定の保護があります。次号で詳述します。

以 上